腕の中でぐずる10カ月の次男にお菓子を食べさせながら、船橋市の会社員、吉満満希子さん(36)は先月下旬、焦る気持ちを打ち明けました。「4月に職場に復職すればよかったかもしれない」。9月に復職するつもりでしたが、市内の認可保育所は定員を超えていて入れません。会社が認める1年半の育児休業の期限は来年の3月。あと8カ月で当選できなければ、認可外保育所に入れるしかありません。

 「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログをきっかけに、参院選の争点として浮上した待機児童問題。昨年4月の県内の待機児童数は1,646人で、このうち船橋市は625人と4割近くを占め、全国市区町村でも世田谷区に次いで2位でした。今年4月時点でも203人に上ります。

 保育所の受け入れ人数は年度初めが多く、当選しやすいです。でも、吉満さんは次男の寝顔を見て「半年あまりで仕事に出て離れたくない」と思いました。赤ちゃん返りの兆候が出ていた3歳の長男のことを考えると「2人の子とゆっくり向かい合う時間が必要だ」とも感じ、子育てに専念しました。

 子育てに区切りを付けていざ復職しようとすると、入所できる保育所はなく、市の担当者から「たくさんの保育所に申し込んで待つしかありません」と言われました。こうなることも覚悟していたが、ふと「4月に……」との思いが頭をよぎりました。

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 東京都内の大学に勤める千葉市中央区の有澤知乃さん(42)が1歳5カ月の長女の保育所を見つけられたのは、復職まで10日を切った昨年3月22日でした。通勤に約2時間かかるため、保育所に当選できなければ、県内で働く夫と別居して娘と大学近くに引っ越すことも考えました。「千葉市は待機児童ゼロと聞いたことがあった。厳しい現実を分かっていなかった」と振り返ります。安倍晋三首相は「全ての女性が輝く社会」を掲げます。女性の就労を促進する取り組みでもありますが、有澤さんは「仕事も育児もしっかりやれと言われているよう。女性に無理をさせているだけ」と感じています。

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 高まる保育ニーズに応えるため、自治体は保育所の整備を急ぎますが、簡単ではありません。2年続けて待機児童ゼロだった千葉市は今年度、3年ぶりに11人(4月1日時点)の待機児童が出ました。保育士不足が大きな要因といいます。厚生労働省によると、保育士の資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」は80万人に上ります。保育士に就かない背景にあるのは低賃金です。保育士の平均月給(2015年)は21万9,200円。全産業の平均33万3,300円に比べ約11万円も低い賃金です。政府は来年度から保育士の給与を引き上げる方針ですが、これも2%相当(月6,000円程度)に留まります。

 保育士の確保に向け、船橋市や待機児童が県内で2番目に多い市川市(昨年4月現在で373人)などは、家賃の一部補助や給与の約3万円上乗せ、市内の保育所で勤務すれば返納を免除される奨学金など独自の対策に乗り出しました。ですが、別の市の幹部からは「保育士の奪い合いになる。財政力のない自治体はたまらない」との声が漏れます。

千葉市の担当者は、遅々として進まない国の対応に訴えます。「保育士は専門性の高い職業。きちんと社会的に評価し、国の責任で賃金の上乗せなど待遇を改善すべきだ」